貸借対照表とは、その会社の期末時点における財政状況を把握するための決算書類の一つです。貸借対照表は大きく3つの項目に分かれ、「資産の部」・「負債の部」・「純資産の部」が一覧表として表わされます。左側に「資産の部」が記載され、その会社が資金を何に使っているのかを示し、右側には資金をどこから集めたのかが示され「負債の部」は株主以外から集めた資金、「純資産の部」は株主からの出資や企業が得た利益の留保などから構成されています。
このように、資金をどのように集めて、どのように使っているのか、つまり会社の財産の源泉と財産の状況が示されています。貸借対照表では、「資産の部」と「負債の部」及び「純資産の部」が必ず均衡するように作成されているため(連結財務諸表では少数株主持分を含む)、バランスシート(Balance Sheet:B/S)とも呼ばれています。
貸借対照表の配列は、流動性の高いものから順に配列されており、短期間で回収できる資産や短期間で返済すべき負債から表示されるようになっています。そのため「資産の部」では「流動資産」→「固定資産」、「負債の部」では「流動資産」→「流動負債」の順に表示される格好となり、このような配列方式は流動性配列法と呼ばれ、大半の企業で用いられています。

貸借対照表(B/S)の概略図
※2006年5月施行の会社法により、それまでの「資本の部」は「純資産の部」に変更されました。
流動資産とは1年以内に現金化が予定されている資産のことで、主として当座資産と棚卸資産があります。当座資産は現金や有価証券等、比較的短期間で現金化が可能なもので、棚卸資産は商品(または制作中の商品)や在庫などのことで販売等の過程を経ることで現金化出来る資産のことです。棚卸資産に関しては、在庫商品の陳腐化などにより現金化が出来ない場合もあります。
科目:現金、売掛金、有価証券など
固定資産とは長期間に亘り使用、または保有する資産のことです。固定資産には主として有形固定資産と無形固定資産があり、有形固定資産とは建物や土地、機械などの具体的な形態を有する資産のことで、無形固定資産とは特許権や営業権、商標権などの目に見えない資産のことです。
科目:建物、車両運搬具、営業権など
繰延資産とは流動資産にも固定資産にも含まれない資産のことで、実体的価値を有さず換金能力を持たないもので、損益計算上は費用として処理される性質の資産です。ただし既に支出が行われ、支出によって購入した創立費や改開業費などについては企業が使用または利用して得ることのできる効果が、将来にわたって長期間に及ぶ場合に計上が認められています。
科目:開業費、試験研究費、開発費など
流動負債とは1年以内に返済を要する負債のことで、短期間のうちに支払期限が到来する負債が科目となります。また1年以内に返還が見込まれる長期の借入金や社債なども流動負債として記載されます。
科目:短期借入金、買掛金など
固定負債とは1年を超えて支払い義務が発生する負債のことで、一般的に支払期限や履行時期の到来が1年以上あとになるものです。返済が長期になるものが科目となります。
科目:社債、長期借入金、退職給付引当金など
※資産と負債を「流動」及び「固定」に区分する基準として、「正常営業環境基準」と「1年基準」(または「ワン・イヤー・ルール」)があり、この基準により分類を行います。最初に「正常営業環境基準」に照らし合わせ、通常の販売取引等で発生する債権や債務などは期間にかかわらず「流動」項目とし、それ以外を「1年基準」をベースに1年以内に回収されるものを「流動」項目としています。
純資産は主として、投資家から集めた資金である「資本金」・「資本剰余金」と、会社の利益の積み上げである「利益剰余金」からなります。前述のように、以前は「資本の部」という名称でしたが、会社法の施行により名称が変更され、内容も従来の「資本の部=株主資本(自己資本)」という考え方のなかに、評価差額などの他要素も加わっています。
基本的な考え方は、「資産の部」−「負債の部」となっています(少数株主持分を除く)。 純資産には、以下の主な科目があります。
| 株主資本 | 株主が出資した「資本金」や「資本剰余金」等や、それらを使って生じた利益の「利益準備金」や「利益剰余金」などのことで、資本金以外の利益準備金や剰余金も、株主等の出資者の持ち分であるという考え方が背景にあります。 |
| 準備金 | 将来予想される支出や損失の発生に備え、準備金勘定として商法で積み立てることが義務付けられた資金のことです。その会社の利益から積み立てられる利益準備金と、資本金から積み立てられる資本準備金があります。 |
| 利益剰余金 | 過去の利益の蓄積分から利益準備金を差引いたもので、毎年度の利益や損失、または積立金などが積み重なったものなど、その発生が利益を原泉とするものです。基本的には、毎期の利益から株主への配当や役員賞与等を差引いたものになります。 |
| 自己株式 | 株式会社が自己の発行した株式を、自ら取得し保有している場合の株式のことです。発行済み株式数にはカウントされないため、時価総額や一株当たり等の指標には含まれず、配当を支払う必要はありません。 |
貸借対照表は基本的に、左側の「資産の部」と右側の「負債の部」・「純資産の部」で構成されますが、連結の貸借対照表には、右側に「少数株主持分」が記載されます。少数株主持分とは、第三者が保有している連結対象の会社(主として子会社)の株のことで、資産や負債とは独立して記載されます。連結財務諸表に特有の科目となります。
A社 平成△△年△期 連結貸借対照表

貸借対照表例
貸借対照表の概要や科目を説明しましたが、実際にその会社の財務状況などを判断する際に、よく用いられる重要な指標について、A社の連結貸借対照表をベースに計算方法を交えて説明します。
当座比率とは企業の財務状況を判断する際の指標で、1年以内に返済しなければならない流動負債を、短期で現金化出来る当座資産でどの程度返せるのかを計算します。つまり短期の負債に対する企業の支払い能力を判断するための指標のことで、企業の財務の安全性を見るためのものといえます。流動資産の科目内の棚卸資産は、短期で現金化出来る資産ではないので、当座資産には含まれません。
比率(数値)が大きいほど、当座資産での返済能力があり、財務の安全性が高いといえます。一般的には100%以上が望ましいとされています。
【A社による計算例】
| 当座資金 | = | = | 2,578,253 | → 0.911 ≒ (91%) | |
| 流動負債 | 2,828,891 |
| ※当座資産 | = 現金 + 定期預金 + 短期投資 + 受取手形 + 売掛金 - 貸倒引当金 = 1,169,756 + 144,781 + 11,978 + 107,317 + 1,188,257 - 43,836 = 2,578,253 |
流動比率とは企業の財務状況を判断する際の指標で、1年以内に返済しなければならない流動負債を、1年以内に現金化出来る当座資産でどの程度返せるのかを計算します。つまり短期の負債に対する企業の支払い能力を判断するための指標のことで、企業の財務の安全性を見るためのものといえます。
同じ短期の負債に対する企業の支払い能力をみる指標として当座比率がありますが、流動比率(流動資産)には棚卸資産など、当座資産よりも現金化に時間を要する資産も含まれます。
比率(数値)が大きいほど、当座資産での返済能力があり、財務の安全性が高いといえます。一般的には200%以上が理想的とされています。
【A社による計算例】
| 流動資産 | = | = | 4,030,532 | → 1.424 ≒ (142%) | |
| 流動負債 | 2,828,891 |
固定比率とは企業の財務状況を判断する際の指標で、返済する必要のない自己資本で固定資産の購入をどの程度賄うことが出来るのかを計算します。固定資産は、1年以上にわたり使用される資産であることから、この調達資金の源泉は、返済期限のない株主資本(自己資本)で賄うのが安全な財務措置と考えられます。
自己資本で固定資産を購入することが理想的なため、比率(数値)が小さいほど、財務の安全性が高いと判断されます。一般的には100%以下が理想的とされています。
【A社による計算例】
| 固定資産 | = | = | 8,056,881 - 4,030,532 | → 1.132 ≒ (113%) | |
| 自己資本 | 3,554,252 |
| ※固定資産 | = 資産合計 - 流動資産 (-繰延資産) = 8,056,881 − 4,030,532 = 4,026,349 |
固定長期適合率とは企業の財務状況を判断する際の指標で、返済する必要のない自己資本と長期での返済となる固定負債により固定資産の購入をどの程度賄うことが出来るのかを計算します。類似する指標に固定比率がありますが、大半の企業は設備投資等の資金を株式の発行等による株主資本(自己資本)のみによって賄うことが出来ず、固定負債である銀行等からの借入や社債等を発行して賄っているとみられています。
そのため固定比率が100%を超えている場合が多く、日本の実情に即した財務の安全性を検討するためには、固定比率よりも、固定負債をも考慮した固定長期適合率が妥当であると考えられています。
比率(数値)が小さいほど、財務の安全性が高いと判断されます。一般的には100%以下が理想的とされています。
【A社による計算例】
| 固定資産 | = | = | 8,056,881 - 4,030,532 | → 0.770 ≒ (77%) | |
| 自己資本 + 固定負債 | 8,056,881 - 2,828,291 |
| ※自己資本 + 固定資本 | = 負債流動資産合計 - 流動負債 = 8,056,881 − 4,030,532 = 4,026,349 |
自己資本比率とは企業の財務状況を判断する際の指標で、総資本に占める純資産(自己資本)の割合を計算します。自己資本は資本金、法定準備金、剰余金などから構成され、他人資本である負債と異なり返済の義務はありません。また配当金支払いも金利支払いとは異なり、業績に応じて弾力的に行えるため、自己資本は企業経営にとって安定的かつ好都合な資金源といえます。
そのため、総資本に対する自己資本の割合が高いほど企業経営の安全度が高いと見られます。自己資本は株主資本とも呼ばれているため、自己資本比率は株主資本比率とも言います。
比率(数値)が高いほど、財務の安全性が高いと判断されます。
【A社による計算例】
| 純資産 | = | = | 3,554,252 | → 0.439 ≒ (44%) | |
| 純資本 | 8,056,881 |
| 計算式 | 財務の安全性 | 理想の目安 | |
| 当座比率 | 当座資産/流動負債 | 比率が高いほど良い | 100%以上が望ましい |
| 流動比率 | 流動資産/流動負債 | 比率が高いほど良い | 200%以上が理想的 |
| 固定比率 | 固定資産/自己資本 | 比率が低いほど良い | 100%以下が理想的 |
| 固定長期適合率 | 固定資産/(自己資本+固定負債) | 比率が低いほど良い | 100%以下が望ましい |
| 自己資本比率 | 純資産/純資本 | 比率が高いほど良い | 高いほど良い |