キャッシュフロー計算書とは、企業の会計年度(主として4月1日から翌年の3月31日)における、現金や普通預金、当座預金などのキャッシュのフロー(流れ)を示す書類の一つです。キャッシュフローの状況を一定の活動に区分けしたうえで表示されるため、企業活動を通して得た資金や、獲得した資金をどのように利用したかを判断することが出来ます。つまり、その年度にどの程度のキャッシュを稼ぎ出し(または調達し)、どの程度の投資を行い、最終的には手元にどの程度残っているか、を見ることが出来るものです。キャッシュの増減のみが記載され複雑な判断基準が少ないことから、会計基準の異なる企業との比較や同業他社との比較が、損益計算書(P/L)や貸借対照表(B/S)に比べ容易といわれています。C/F(Cash Flow statement)とも呼ばれています。
項目の概略は下記の図のようになりますが、キャッシュの流れは「営業活動によるキャッシュフロー」、「投資活動によるキャッシュフロー」、「財務活動によるキャッシュフロー」に区分して表示されます。そのため単なるキャッシュの増減だけではなく、どのような活動内容でキャッシュが増減したのかを見ることができ、企業の活動状況をキャッシュ面から分析することができます。

キャッシュフロー計算書(C/F)の概略図
営業によるキャッシュフローは、3つのキャッシュフローのなかで最も大切だといわれており、会社本来の営業活動に関わるキャッシュの出入りを示したものです。つまり、会社本来の目的である営業活動(商品や役務の提供による収入、及び仕入や原材料による支出等)によるキャッシュ(資金)の流れを把握することができ、営業活動によりどの程度の資金を獲得できたかが記載されます。
企業(会社)の最も中心となる活動は、モノを仕入れ製造しそれを販売することです。仕入れや製造を行うと材料費や人件費などとして資金が出ていきますが、次にそれを売れば、売上として資金が入ってきます。この活動は会社の本来の仕事ですから、いわば基本のキャッシュフローということになります。
また営業によるキャッシュフローは、企業が日々の営業活動から得たキャッシュの量であり、これは企業がキャッシュを創出する能力といえます。損益計算書(P/L)における営業損益は、お金の出入りを度外視した営業活動の収益・費用の発生による利益計算でしたが、お金の出入りに応じて増減調整し、営業活動での営業収入と営業支出によるキャッシュの増減に変化させたものともいえます。
営業収入による増減とは、売掛金の回収や受取手形の割引などによる営業債権の現金化で増加し、買掛金の支払や支払手形の期日到来などによる営業債務の支出で減少する格好になります。そのため、営業活動によるキャッシュフローが多いほど、会社の本来業務で多くのキャッシュを獲得できたといえます。
逆に営業キャッシュフローがプラスであってこそ設備投資等が行なえるのであって、マイナスならば何をするにも借入金に頼らざるを得ず、将来への設備投資はもちろん、現状を維持するための設備投資も満足に行なえない状況だといえます。
従って、営業キャッシュフローがプラスになっていることが、収益力の高い会社の必要条件といえます。仮にここが赤字の場合には、営業活動がうまくいっていないという根本的な問題なので、経営状態は非常に厳しいと判断することができます。つまり、営業キャッシュフローがマイナスであれば、資金と労力をかけても本業で利益があがらない状態であり、資金繰りが厳しい状況にあるといえます。前年度比で大幅に減少しているようであれば、営業上での大きな支出原因を売上収入でカバーし切れていないと見られることになります。
以下はC社の「営業活動によるキャッシュフロー」になります(平成△△年△月△日〜平成○○年○月○日、以下同様)。
キャッシュフロー計算書では、入ってきた資金(お金)はプラスで表示され、出て行った資金はマイナス(または△)で表示されます。
【C社の営業活動によるキャッシュフロー】

営業活動によるキャッシュフロー例
| 「税金等調整前当期純利益又は税金等調整前当期純損失」は、損益計算書(P/L)における税金等調整前当期純利益のことです。つまり、会社の本業による現金収支です。 | |
| 「減価償却費」は、帳簿上は費用として計上されていますが、実際に現金は払っていない(出て行っていない)ためプラスで表示されます。 | |
| 「役員賞与の支払額」のような、実際に支払いが行われたもの(現金が出て行ったもの)はマイナスで表示されます。 | |
| 「法人税等の支払額」は、損益計算書(P/L)における「法人税等」のことです。 | |
| 「営業活動によるキャッシュフロー」は科目の合計で、本業で稼いだ結果残る現金のことであり、これが多ければ多いほど企業活動は良好といえます。 |
※営業によるキャッシュフローを表示する方法には、直接法と間接法の2種類があります。直接法は、キャッシュに影響するすべての取引を集計する方法で、入金総額から出金総額を引いて営業キャッシュフローを算出します。キャッシュフローが総額で表示されるので、営業活動の規模や、取引の全体像が分かりやすいというメリットがあります。間接法は、純利益に損益計算書(P/L)の非キャッシュ項目である「減価償却費等」と「貸借対照表の残高調整」を加えたものです。損益計算書と貸借対照表から作成するので、対応しやすく労力が低減出来ることから、実務的には間接法が多くの企業で採用されているようです。
投資活動によるキャッシュフローは、その名の通り投資活動のキャッシュフローのことで、企業活動に不可欠な設備投資にどの程度の資金を支出し、どの程度の資金を回収したかを示しています。企業活動において長期ビジョンに立脚した判断による機械や車輌などの購入、売却、または取引先への資金の貸し付け、有価証券の購入や売却などにより、主に貸借対照表(B/S)における固定資産を増減させるためのキャッシュの増減を表したものともいえます。
投資キャッシュフローは、長期ビジョンでの余剰的資金の投資とその回収であり、この投資活動によるキャッシュフローは当期の投資活動と過去の投資活動の回収の結果となります。設備投資すなわち土地・建物・機械などを購入した資金もしくは設備を売却した資金の結果で、通常購入の方が多くなりますのでマイナスとなります。そのため、このフローがマイナスであったとしても、ビジョンに則った投資が原因であれば大きな問題ではないと考えられます。
仮に投資活動によるキャッシュフローがプラスであった場合、プラスであることが良好とは単純にはいえません。投資活動によるキャッシュフローがプラスになっているということは、将来の企業成長のための設備投資を控え、しかも既存の設備を売却していることが考えられるので、企業成長を考えた場合あまり望ましい姿とはいえないでしょう。
また、中心になるのは設備投資ですが、株式の売上売買や土地などの売却の資金の流れ投資キャッシュフローに含まれます。投資キャッシュフローの状況をみれば、会社の設備投資の展開ぶりや新規企業への取り組みなどを知ることができると思われます。
【C社の投資活動によるキャッシュフロー】

投資活動によるキャッシュフロー例
| 「投資活動によるキャッシュフロー」は科目の合計で、将来への投資は現金がある程度減少しても必要であり、マイナスであっても内容次第で問題は少ないと考えられます。 |
財務活動によるキャッシュフローは、借入や増資によりどの程度の資金が調達され、また借入金の返済にどの程度の資金が支出されたかを示しています。つまり、会社の営業活動や投資活動を支えるためのキャッシュをどのような方法で調達し、また返済しているのかが記載されています。
企業が営業活動や投資活動を行った結果、資金に余裕が生まれた場合にそれをどう使ったか、または資金が不足した場合にどう調達したか、を表す内容となっており、資金に余裕がある場合には資金運用等を行い、資金が不足した場合には銀行借入等で手当てする格好となります。そのような財務活動による資金の出と入りの状況を示すのが財務キャッシュフローで、この表を見ることにより、会社の財務活動を判断することが出来ます。
財務活動キャッシュフローでは、営業活動や投資活動のために銀行から資金を借り入れた場合に資金が増加し(プラス表示)、借入金を返済すると資金が減少(マイナス表示)となります。
キャッシュフローがマイナスであっても、当初からの返済計画どおりの資金流出が原因であり、新たな借入をする必要がなかった場合などは健全な状態にあるといえます。
【C社の財務活動によるキャッシュフロー】

財務活動によるキャッシュフロー例
| 「財務活動によるキャッシュフロー」は科目の合計で、銀行などからの借り入れは出来るだけ少ない方が良いので、マイナスの方が良い状態といえます。 |
上記の営業活動によるキャッシュフロー、投資活動によるキャッシュフロー、財務活動によるキャッシュフローを合計したものになります。
【C社のキャッシュフロー合計】

キャッシュフロー合計例
| 現金及び現金同等物の増減額 | = | 営業活動によるキャッシュフロー | + | 投資活動によるキャッシュフロー | + | 財務活動によるキャッシュフロー | + | (現金及び現金同等物に係る換算差額) |
| = | + | + | + | ( ) | ||||
| = | 69,573 + (-117,828) + 36,126 + (-182) → -12,311 | |||||||
| 「現金及び現金同等物の期首残高」は、会計年度における期初時点のキャッシュの残高で、前年度の「現金及び現金同等物の期末残高」に相当します。 |
| 現金及び現金同等物の期末残高 | = | 現金及び現金同等物の期首残高 | + | 現金及び現金同等物の増減額 | + | (連結範囲の変更による現金及び現金同等物の増加額) |
| = | + | + | ( ) | |||
| = | 23,778 + (-12,311) + 274 → 11,741 | |||||
| 「現金及び現金同等物の期末残高」は、会計年度の期末時点で残った現金になるので、貸借対照表(B/S)における「現金及び預金」の項目に該当します。 |
※フリーキャッシュフロー
キャッシュフロー計算書では、最後のキャッシュ残高よりも、「フリーキャッシュフロー」が最も注目すべき項目といわれています。フリーキャッシュフローとは自由に使える資金のことで、「営業キャッシュフロー」と「投資キャッシュフロー」の合計になります。
営業キャッシュフロー(営業活動で稼いだ資金)から、投資キャッシュフロー(営業上必要な設備投資の資金)を差し引いて余った金額が、フリーキャッシュフロー(自由に使える資金)になります。この資金があってこそ、新規事業への投資や借金返済、または手元資金として内部留保等を行うことが出来ます。逆にこれがなければ、新規事業等を行なう際の資金は銀行借入等を行なわなければできませんので、この状況が続くと、会社の存続は厳しくなってきます。
ただし、資金は運用しなければ意味がないという考え方から、過剰に資金を保有している場合には、資金を眠らせていることになり効果的な活用という面で問題もあります。
| 減少要因 | 増加要因 | 理想状態 | |
| 営業キャッシュフロー | ・原料や物品購入 ・金利の支払い など |
・預金 ・減価償却 など |
プラスが多いほど良い |
| 投資キャッシュフロー | ・投資 ・資金の貸与 など |
・資産の売却 ・株式売却 など |
プラスまたは営業キャッシュフローの範囲内でマイナス |
| 財務キャッシュフロー | ・借金の返済 ・配当の支出 など |
・借金 ・増資 など |
マイナスが望ましい |
| フリーキャッシュフロー | 営業キャッシュフロー、投資キャッシュフローの合計 | プラスが多いほど良い | |